アトリエヨシノ“Ballet for Peace”主催 マラーホフ版『白鳥の湖』全幕
日本初演から再演までのストーリー

世界のスーパースター、ウラジーミル・マラーホフ氏との出会い

ステージ衣裳のレンタル会社であるアトリエヨシノがバレエ「全幕衣裳シリーズ」のラインナップ拡充を企図していた2017年。さまざまな偶然が重なり、代表取締役 吉野勝恵は、世界のスーパースターであるウラジーミル・マラーホフ氏に旧知の友人を介して出会いました。

マラーホフ氏はちょうどその頃、東欧の美しき国クロアチアで自身の演出/振付による『白鳥の湖』の世界初演を果たしたばかりでした。舞台への情熱に溢れ陽気な二人はすぐに打ち解け、大いに盛り上がります。そして、芸術やバレエに関する発展的な会話の中から、アトリエヨシノ主催による『白鳥の湖』日本初演の構想が生まれ、その場で英断・合意に至りました。

マラーホフ版『白鳥の湖』全幕 日本初演!

それから開催までの約1年、スタッフ・主役の決定、出演者オーディションの開催、リハーサル、そして全幕衣裳1の新規制作など目まぐるしい準備を推し進め、2018年9月9日に、めぐろパーシモンホール(東京)に満場のお客様を迎え、一夜限りの日本初演が実現しました。多くの方々のご協力により、マラーホフ版『白鳥の湖』全幕の日本初演は成功裡に終了し、高い評価もいただきました。

そしてとりわけ本公演に足を運ぶことの叶わなかった関西や地方都市からは再演を望む声を数多くいただきました。しかしながらその当時、アトリエヨシノ内では文化事業を手掛ける余力も少なく、残念ながら実現を果たすことができませんでした。

  1. マラーホフ氏監修による『白鳥の湖』全幕衣裳は、2019年にラインナップに加わり、レンタルを開始しています。 ↩︎

芸術継承チャリティー公演「Ballet for Peace」の開催へ

その後、世界的にコロナウイルスが蔓延し、更には世界情勢の悪化も重なり、経済活動へのダメージに加え海外への渡航や滞在が大きく制限されるに至ります。文化芸術が途絶えた社会、生活を経験することにより、改めて我々人類が育んできた文化芸術に対する認識を深めることとなりました。世間では「文化芸術は不要不急か?」という議論がなされる一方で、それを強く求める声が日に日に多くなっていく実感もありました。また、文化芸術に携わる方々のそこはかとない情熱とパワーをヒシヒシと感じ、今だからこそアトリエヨシノとしてできることを模索し始めます。

そこで、とりわけ大きな打撃を受けていた現地の芸術業界や帰国を余儀なくされたプロダンサーやアカデミー生を支援するプロジェクト“Ballet for Peace”を立ち上げ、2022年5月東京・11月大阪において「芸術継承チャリティー公演」を開催しました。日本に帰国していたダンサーに踊る場(舞台機会)を創出するとともに、その収益金はキエフ・バレエ(現ウクライナ国立バレエ)などに寄付させていただきました。当日のパンフレットには、マラーホフ氏から贈られるすべてのダンサーへの祈りと労いの言葉、そして、日本での『白鳥の湖』再演を願う熱いメッセージも掲載されました。

バレエをはじめとする舞台芸術全般の発展・継承へ

アトリエヨシノは、現在“Ballet for Peace”を通して、バレエを主軸とした舞台芸術全般の更なる発展と次世代への継承を図るとともに、日本における新しい芸術のあり方を模索し、芸術と日常の融合を図ることを使命に感じています。バレエを「踊る・観る・支える」様々な活動を展開し、その実現を目指し、平和でしあわせな社会づくりに寄与貢献していく所存です。

本物の芸術を身近なものとし、芸術と日常の融合を

一例として、国内においては幼少期から本物の芸術に“身近な教養”として日常に寄り添った親しみやすい形で触れていただく活動(地域公演、学校公演など)を展開しています。海外に向けては、ウガンダやコンゴをはじめとしたバレエの環境がまだまだ整っていない国々にバレエ衣裳を寄贈したり、縫製技術の指導を行ったりと、衣裳会社であるアトリエヨシノが今でき得る支援活動を展開しています。

マラーホフ版『白鳥の湖』全幕 待望の再演へ

そしてこの度、「Ballet for Peace」に寄せられたマラーホフ氏のメッセージにも応えるべく、実に7年ぶりとなるマラーホフ版『白鳥の湖』全幕の再演が決定しました。『白鳥の湖』は、バレエの代名詞と言われ、とても人気のある作品です。なかでもマラーホフ版はとりわけドラマティックなバージョンになっていて、初めてバレエを鑑賞される方も存分にお楽しみいただけます。

アトリエヨシノ本社が所在する神奈川県に日本初のバレエ教室が誕生してまもなく100年。この時期に、神奈川県民ホールにて、神奈川県出身の日本を代表するプリマバレリーナ上野水香さん、厚地康雄さんを主役に迎え再演できることに様々なご縁を感じるとともに大変嬉しく思います。

本公演に「出演する」、本公演を「鑑賞する」などを通してぜひ、アトリエヨシノ“Ballet for Peace”の活動にご理解とご協力をお願いいたします。