シャリマーダンサーインタビュー【山田琴音さん】

〜未来を創る⼦ども達の芸術鑑賞の為に〜『Ballet for Peace』シャリマー誕生公演 バレエ「ピーターパン」9月22日・23日の2公演、大盛況にて閉幕いたしました。ご来場いただいた皆様に、改めて御礼申し上げます。

子ども達にバレエを見せたい!という気持ちで集まったシャリマーダンサーの皆さんに、「ピーターパン公演」を終えてみて、舞台を作る裏側やご自身の思いなどを聞いてみました。
今回は、ピーターパン役を演じてくださった、山田琴音さんにお話を伺いました。

ーーーー最初から最後まで、端から端までを走り飛び回っていましたね!元気なピーターパンを演じるにあたり、意識したことはありますか?

山田さん:『この世界の中で、僕が1番なんだ!』と思いながら演じていました!!♡

そもそも「少年の役」を演じたのが初めてで、実年齢よりもぐんと歳を下げて演じなければいけないこと、性別も変えなければいけないこと…色々とチャレンジではありましたが、ありがたいことに現在実家のバレエスタジオに、男の子の生徒さんが数名いるので、彼らのことをよく観察しました。男の子って、性格にもよりますが、基本ノープランで動くし喋るんですよね!(笑)

ピーターパンも、これ楽しそう!と思うことを後先考えずに実行してしまう。とにかく天真爛漫!自己中心的!世界が自分中心に回ってる!(笑)

なので演じていてもノンストレスで、自分の子供時代の性格とも違うキャラクターを演じられたので、凄く楽しかったです♫

ーーーー「ピーターパン」の演出を作り上げるうえで、難しかったところや工夫したところはありますか?

山田さん:演出で、とにかく最後まで色々な意見が出て中々決まらなかったのが、最初の「出発シーン」でした。
本当に窓から出られるように、大きな窓枠の舞台装置を作ってもらおうか…窓枠は吊るしておくだけにするか…

窓に向かって全員が手を繋いで向かっている、というところで照明を暗くして、雲が流れる映像に繋げる。最終的なあの形は私のアイディアでした。あまり現実的な表現はしたくなくて、バレエのテクニックを駆使した演出にしたかったんです。
その後メンバーが「男性に黒衣になってもらって、リフトをしたら飛んで見えるのでは?」とアイディアを足してくれたり、照明さんや映像のスタッフの方々もアイディアを出してくれて、本当に全員で考えて作りあげたシーンでした。

あと大変だったのが音楽!
今回ディズニーの音楽をそのまま使用したのですが、あれはあくまでも映画のサウンドトラック。普段私たちが振付に使うクラシック曲とは全く違って、曲によっては全くカウントできない曲もあったり、セリフも入っていたり…
全員でスタジオで座り込んで、音楽を何度も繰り返し聴いて、全員で頭を抱える…なんて日もありました。(笑)

ーーーー山田さんのコンテンポラリー作品「Heartstrings」について、ご自身の経験を込めて作り上げた作品ということですが、具体的な内容や込められた気持ちを教えていただけますか?

山田さん:「heartstrings」は、私が16歳の時にリハーサル中に膝の大怪我をして、なんとか舞台に立てるまでは復帰しましたが、主役を降板したスタジオの発表会で、母が私のために作ってくれた作品です。コンテンポラリーも経験してきた私自身が、原形は残しつつ作り直しました。

膝の怪我のあとも、足の甲を疲労骨折したり、何かと怪我が多く苦しく辛い経験も多くて、「もうこんな痛くて辛い思いをしてまでバレエ続けたくない」という気持ちに何度もなりました。
でも最終的には、毎回戻ってきました。

トゥ・シューズを手離して、最後はまた手に取って、踊ることへの気持ちに想いを馳せる。。そんな作品です。私の代表作となりました!

ーーーー今回シャリマー公演を行う前、行った後の気持ちの変化はありましたか?

山田さん:バレエダンサーって、クラシックバレエ・古典作品に対してプライドやリスペクトがとてもある職業なんです。

芸術監督を務めてくださった、宝塚歌劇出身の水谷啓子先生が出してくれるアイディアは、長くクラシックバレエ界で生きているダンサーにとっては、全く無い発想ばかり!!クラシックバレエとして譲れない部分と、私達にとっては挑戦的な演出や表現とを、お互いの気持ちを織り交ぜながら作りました。今回こんなにお子さん達に楽しんで頂ける舞台が作れたのは、水谷先生が居たからこそ、と思っています。

と、同時に、ここまでクラシックバレエの舞台の概念や常識を崩して作り上げた舞台が、こんなに受け入れられるんだ!と大きな発見でもありました。
これで「バレエって面白い!」と思ってもらえて、バレエの古典作品も観てもらえるきっかけや入り口になるのなら、それに特化した団体があることは面白いなぁと思います。

ーーーー舞台から見る子ども達の目線はどのように感じましたか?

山田さん:まず、横山茉美さんの開演前の掴みがバッチリだった!!(笑)
マイム体験に参加してくれたり、舞台袖まで反応が聞こえて来たのはとても嬉しかったです!
大人ですら、全く知らないものを見るのは難しいことです。子どもたちをこれから始まる、幕が上がる舞台に心を引き込めたことは大きかったと思います。

ピーターを演じていて、舞台のフチに座ったりと、客席のかなり近いところまで行き前方のお客様の顔を見ると、キラキラした顔で真っ直ぐの眼差しで、目の前で繰り広げられる物語を見守っているのが見えましたですが、実は舞台上で踊っていると、音楽も大きな音量で流れていることもあり、客席の声はあまり聞こえないんです。(涙)
子ども達がたくさん笑っていたよ!と観に来てくれたお客様からも教えていただき、嬉しかった!!40分という作品の長さも子ども達にとっては良かったのかなぁと思います♪

ーーーーシャリマー立ち上げから「ピーターパン」の公演全体を通じて、一番大変だと思ったことは何ですか?また、やり甲斐だと感じた瞬間はどのようなところですか?

山田さん:まず与えられた私へのミッションは「ダンサーが自立して取り組む」ことでした。

振り返ってみると色々な方の力を借りましたが、作品全体の構成・振付・音の繋ぎ・照明・演出プラン…振付・演出家の言われた通りに踊ることに慣れている私にとっては、全てが手探りでそこが大変…と思っていたら、始まってみたらみんな本当にアイディアが止まらない!!(笑)むしろアイディアが出過ぎてまとまらないこともしばしば。笑

私個人としては、シャリマーの総務として色々事務的な仕事も務めさせていただいたのですが、会社とダンサーの架け橋、各方面のスタッフさんとの打ち合わせ等、慣れない仕事をたくさんこなしました。大変でしたが、舞台を作るためには必要な仕事。改めてダンサーだけでは舞台は作れないと再確認できました。

いつも舞台のやり甲斐を感じるのは、舞台後の打ち上げで美味しいお酒が飲めた時!!…というのは半分嘘で半分本当!この「ピーターパン」公演へ向けて一緒に頑張って来た仲間と達成感を分かち合えた瞬間は、努力や苦労が報われたなぁと思いました。

ーーーーピーターパンとその他役柄のアトリエヨシノの衣装で印象的だったものはありますか?

山田さん:ピーターパンの衣装は、アトリエヨシノさんには2種類あり、今回はディズニーのイメージとは少し違う、バレエ寄りの衣装を着用させていただきました。
全体が優しい緑で、葉っぱの飾りが多くあしらわれたお衣装で、今回はそれに濃い緑色のタイツとハイカットの黒いジャズブーツを合わせました。普通の人間との違いを表せたのではないかと思います!

他のキャラクターで好きだった衣装は、マーメイド!
足のヒレがあると踊れないので、ヒレに見える素材・色の布で作られたズボンのお衣装!!アイディアも素晴らしいし、色合いも、動きに合わせてひらめく布も、照明と相まって本当に綺麗な衣装でした!!

ーーーーアンケート結果をご覧になって、印象に残ったことはありますか?

山田さん:見たい演目で「アリス」が1位になったのは、会場ロビーの衣装展示が本当に絵本の中から飛び出たかのように可愛らしくて、ダントツ1位になったのは納得です!!個人的にはフラミンゴのお衣装がお気に入りでした♡

やはり童話が多かったのは子どもならではの意見かなと思いました。バレエ作品としてキャラクター化したら面白いだろうなー!と思うキャラクターもいますが、せっかく作品にするのなら、ただ面白いだけで終わらず、何かしらメッセージ性のあるものをバレエ化したいなとは思います!

ーーーー今後学校公演を行っていく上で、子ども達に伝えたいことはありますか?

山田さん:今回の公演直前に、相模原のLCA国際小学校様に実際に学校訪問させていただいたのですが、バレエの舞台では味わえない距離感での子どもたちの熱量と反応…! 本当に楽しかったです。 中にはバレエを習っている生徒さんもいましたが、全く初めてバレエに触れる子どもや、先生方からの反応も目の前で感じることが出来て、貴重な経験でした。
「バレエやってみたい!」と思ってもらえたなら、それは1番嬉しいですが、まずはこんな世界もあるんだなぁ、こんな職業もあるんだなぁと知ってもらうためにも、学校公演という活動はシャリマーに限らずバレエ界全体で取り組み続けるべきだと思いました。

《子ども達に読んでもらいたいインタビュー》 是非お子様にご紹介ください!

Q. バレエをやっていて一番うれしい時はどんなときですか?

山田さん:舞台で踊って、お客様に大きな拍手をもらえた時が、1番嬉しいです!
出来なかったことが努力して出来るようになった時も、嬉しいです😊

Q. ピーターパンの役で、難しかったところはどんなところですか?

山田さん:男の子の役を演じたのが初めてだったので、表情や仕草を考えるのが難しかったけど、楽しかったです!

Q. バレエでこれから挑戦したいことはありますか?

山田さん:悪役を演じたい!!

Q. バレエ以外に大好きなものはなんですか?

山田さん:美味しいものを食べること!
たまにはバレエのためにガマンしている食べ物を食べて、また明日からバレエがんばろう!と思います♡

たくさんの試みや色々な感情とともに構成された舞台であったと改めて分かりました!子ども向けの舞台であるからこそ、よりわかりやすい工夫や惹かれるアイディアが必要で、ひとつも妥協がなく丁寧に作り込まれた世界観に大人も吸い込まれるようでした。
これからも、古典バレエの良さを伝えつつ、新しい試みも盛り込みながらたくさんの人を魅了させて欲しいです。

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